中学受験の現状を紐解く 5)必要な勉強時間は、大手塾の作りだした幻想


中学受験生の勉強時間は、実際のところどうなのでしょうか?

多くの学習塾さんの授業時間、そして説明会などで提唱される標準的な家庭学習の時間についてまとめて見たいと思います。そして、それを、小5ー中2ー高2、というラインで比較をして見たいと思います。

まずは5年生の中学受験大手各社の授業時間を見て見ましょう。これは講習期間などは別で、標準的な1週間の「授業時間」(単位は分)です。

これに加えて、各社宿題があって、それにかかる時間は、一様には言えないものの、一般的な中学受験のない生徒の1日の学校外の学習時間の平均が「61分」となっていますが、中学受験予定者は「120分」になっています。そもそもが、授業時間だけでも、受験予定のない生徒の平均61分を超えていますので、それに宿題がONされると、+60分、となるのは当然、というところです。

こちらの表がその実態を一部表しているでしょう。

まず大事なのは、この表は「塾での授業時間は含まない、家庭学習の時間」ですので、先にあげた各社の授業時間に+オン、されるものです。平日の最頻値は1時間以内となっており、この数字だと、受験予定のない子の勉強時間+60分で120分、というところはわからなくない数字です。

このくらいだとある程度妥当な気もしますが、やはり注目すべきは、難関でも、中堅でも週末については、「6時間以上」が5年生でも最も多い、20%前後がそうなっている、というところです。

これは痺れますよね。5年生で、週末に6時間以上受験勉強をしている、と。

ただ、もう1点重要なのは、すごい勉強時間の人も確かにいるが、それは決して決して、マジョリティではない、ということです。

さらに言えば、難関校を目指す生徒と、中堅校を目指す生徒で、学習時間の分布の傾向に差は見られませんので、実は、勉強時間と合格者の分布とは相関関係はさほどないのではないか、と推測されるということです。

勉強時間が短くとも、受かる人は難関校に合格するし、長くとも受からない人は受からない、という可能性ですね。

この件については、第6回で検証して見たいと思います。

さて、では他方、中学2年生はどんな感じでしょうか。

色々なデータがあるのですが、先に出しました学習時間の平均と同じ資料によると、中学2年生の 学校外での学習時間の平均は78分ですので、小学5年生の受験予定者の120分と比べると、はるかに少なくなっています。

ちなみに、高校2年生ならばどうか、というところですが、このようなデータがあります。

2時間未満、というのは120分未満ということですが、このデータは「春休み」、つまりは「休日」ということになりますので、小学5年生ですと、難関校を目指そうが、中堅校であろうが、40%未難しか2時間未満という人はいません。また、5時間以上、という子は、小5だと、ともに30%以上います。高2では10%しかいないわけです。

さて、ここまでの比較で言いたいことは、いくつかに絞られます。

1)小5の受験生の勉強時間は中2、高2と比べて間違いなく多い。

2)難関校と中堅校で勉強時間の分布に差がないので、勉強時間と合格者分布には相関性が薄い可能性が高い。

3)中2、高2と比べて、まだメンタルも脳の発達も進んでいない小5のうちに、このようにたくさんの勉強時間を費やすことは、ポジティブな結果に繋がるとは言いにくいのではないか。

4)実は、過半数は異常なし勉強時間とは言えない範疇で取り組んでいるが、2、3割がものすごい勉強量となっており、中学受験のイメージがこの一部の「猛烈層」のイメージに強く影響されている可能性がある。

このような考察から見えてくることは、

中学受験の勉強時間は、不必要に「多いことが必要」と誤認させられている

可能性が大いにある、ということです。

ん?なんのためにそんなイメージを作っているの?それは、いうまでもなく、中学受験予備校の創り出している幻想、ですね。彼らからすれば、「中学受験には小3、4からそこに向けて時間を多大に費やしてれればくれるほど」「客単価が上がり」「儲かる」からです。

ですから、必死に「中学受験は大変だ!」「中学受験は特別だ!」「だから、全てを投げ打って勉強しないといけない」というイメージを作っているわけです。極論すれば。

この幻想は、打破されるべきもの、と思っています。